本を出してみてわかった「本を出す」ということの理想と、現実。

 本を出して8日目になるが、相変わらず静かである。
 ツイッター上やAmazonで「まぁまぁ、いんじゃね」ぐらいの評価を、ポツポツ・・・といただくようになり、現在の売り上げも編集者さまによると全体的には
 「割とよいほう」ぐらいだそうで(すごく良くはない)、ホントに波のない状態を過ごしている。トータルで言うと60点ぐらい。悪くはないし。さして良くもない感じをキープしている。いやぁ、しかし、ホントに静かだ。伊坂幸太郎氏が「オーデュボンの祈り」を書き上げた時に、「これが世に出れば何かが変わっちゃうんだ」っていざ出版してみたらすごい無反応でビックリしたって言ってたけど、「本出す」ってのは総じてみんな「静か」なもんだ、という心構えは必要なのかもしれない。いや、ホントにビックリするよ。静かで。
 本出して大学中退ニートから一発逆転を狙う、みたいなこと当然のごとく思ってきたけど、この感じだとたいして今までと変わんねーな、って感じもするし、自慢したいんだけど、自慢できる友達がまずほとんどいない。だからネット上で「本出したんだよ!」って自慢しまくってんだけど、総じてウザがられる。
 もしくは「すごいねー」とか「へぇー」とかいう薄いリアクションしかもらえないし、なんか親に至っては「へぇーすごいじゃん。で、次の仕事は?」とか、すごい現実的なこと言ってくるし、なんか「本を出しました」ってことがあんま世間的に「尊重に値するアイデンティティ」として効かないな、っていうことも実感したし、結果的にあんま「大学中退ニート」っていう「汚れ」はまったく落とされてない、っていう感じがね。すごいするよ。
 ・・・でもね。それでよかったと思うのよ。これでいきなり10万部とか売れてたら、ホント調子乗ってたと思う。いろいろイタい感じになってた・・・。ダ・ヴィンチとかで人生とか語ってたかも。いやホントに。そうならない方向で良かった。現実の冷水はつねに浴びておかないと大変なことになるわこれ・・・。すぐ調子乗っちゃう。
 
 だから今日はね。現実的な話をしようと思うのよ。「本を出す」ことについての生々しい現実についてですよ。このブログ読んでる人は物書き志望も多いので、心構えとして参考にしといても損はないと思いますよ。
 まずよく聞かれるのは「印税」ね。印税何%なんですか?ってけっこう興味あるとこじゃないですかね。これはね。10%ってよく言われてますけど、ボクの場合は9%です。残り1%はどこにいくかっていうと、絵を描かれたなかむらるみさんのところへ行くのだそうです。(ちなみにビックダディの本の印税は初版8パーセントらしい・・・なぜそんな低いのかは知らんが)
 とにかく印税10%は、あんまり確定的な数字じゃないってことですよ。それは覚えておいても損はない。

 そんで「初版の数はどれくらいなんですか?」っていうのも聞かれましたが、
 これはボクの場合、5000部です。5000部ってあんま多くないねって思う人もいるかもしれないけど、ボクは最初、「5000部だ」って聞いたとき、けっこう多いなって思った。フツー、無名のライターの著作って「5000部以下」が平均だって言われてるし。だから基準値の5000部はけっこう出したなって数字だと思う。
 印税が9パーで、5000部ってなってくると、それにともなう印税ってどれくらいになっているんですか?ってなると思うんですけどね。これは単純に5000÷9%なので「約55万円」
 そっから献本用(人に贈る本)の数が引かれるんだけど、これはちょっとややこしいのではぶくとして、まぁ50万弱のお金をもらえます。50万・・・。
 えーっと本を書き始めたのが7月で、完成したのが10月の終わりだったから、のべ4ヶ月か。4か月で50万。一日に換算すると4000円だから、バイトよりええな。ぐらいだな(でも本なんてそんなコンスタントには出せないので、長いスパンで考えるとバイトの方がマシ)
 増刷されたらまたその分だけ、もらえます。増刷されたらね。
 5000部中何部売れている? とか。次の本を出せるほどの売上は達成したか?とか、重版がかかりそう?とか、そういう情報は作者にはよくわからないので、動向を知っている編集者さんから教えてもらいます。紀伊國屋書店で売れましたー、とか。まだ発売したばっかりなので今は様子見。「割とよい」ほうらしいです・・・。
 
 ちなみに、編集者さんとは今に至るまで、一回も会っておりません。 
 電話連絡だけです。(初めに編集者から電話が来たときは、本当に手が震えた)
 絵を描いたなかむらるみさんとも会ってないし、この本にたずさわった人と誰とも会ってません。
 ずーっと部屋に引きこもったまま、完成したのです。
 春樹の本を読む → 書く → それを編集者に送る → 感想をもらう → また読む。
 これの繰り返し。そんで全作品終わったら、それを原稿にプリントアウトした「ゲラ」が届き、それをチャックして、また編集者に送り、校正者がそれをチャックして、そのやりとりを何度が繰り返し、本になる、という感じなのです。
 そんで最終的に、完成ってなって、編集者の方から完成品が送られてきます。著者用に10冊、それと「出版契約書」です。出版契約書には「乙は、本著作を~」とか難しいことが書かれてあって、そこにハンコと名前、住所を書いて、またそれを送り返すのです。領収書と一緒に。この領収書は春樹の小説、それに関する資料の領収書です。春樹関連の本は経費で落ちます。

 けっこうね。一冊の本にもいろんな人が関わってるらしいよ。ブックカバーを作った人とか、「村上春樹いじり」ってタイトルだってオレが決めたんじゃなくて、編集者の人の案と、編集会議で決めたんですからね。オレはその会議をさっぱり見てないし、ずーっと家に引きこもってただけなんだけど。
 「印税の50万円の使い道は?」ってメールで聞かれたんですけど、使い道は正直、今まで通り映画とか本とか食べるもんとか・・・そういうのに。それ以外に欲しいものがない・・・。
 「本を出す前と後で何か変化したことは?」っていうと、やっぱり将来の不安感というか、この先やばくね、みたいな。オレどうにもならないんじゃねーか。っていうあの絶望的な感じからちょっと(いやかなり)抜け出せたような気がする。でもステージが変わっただけで、別の恐怖ってのがあるんだけど、「次回作のあてはあるのか?」「5年後、10年後、30年後、それ以降のビジョンはある?」とかね・・・。考えるとゾッとする。ビジョンなんかねーよ・・・。次回作のあて? あんのかな・・・。わかんない。他の出版社から声がかかってきたり、とかさ。もっとくると思ってるんだけどさ。今んところないね。来るはずなんだけど。おかしいね。照れてるのかな。まぁもし来たとしても、その時は頼まれたことをなんでもやろうとは思ってるけどね。ライターとして生きていくのか、それとも小説家をまた目指すのか、は頼まれた仕事によってなんでも・・・変えていきます。
 まぁ、仕事がなかったり、次回作の目処がたたない場合はね。今まで通り、最強のネガティブフリーターとして復活しますよ。そのほうが自分らしいしね。
 あと「自分の本が書店に並んでいるのを見たときの気持ちは?」ってのも聞かれたんですけど、これはね。そりゃ嬉しいよね。ツイッター見てくださいよ。もう並べられてる写真リツイートしまくってますから。自分の近所の本屋にはまだないから実感はないけど。あったらまたやっちゃうでしょう。でもこれが人生のピークかもしんないし、ちょっとぐらい調子乗ったっていいよね!
 まぁ、本を出して何が変わるのか? っていったら生活自体はなんも変わんないし、アクセスも変わんないけど、やっぱり「やり遂げたぞ」っていうアイデンティティにはなる! 損することはない! と思う。あと人脈も増えるだろうし。

 あと最後に思ったけど、本出してみると、けっこう(というかかなり)アマゾンレビューって気になるわ。しょっちゅう見てるもん。読み手だったときはアマゾンに書いたって書かれた対象者はそんなの見もしないし、気にもしないって思ってたけど、これは気にするな・・・。ホント気になる。だからね。ちょっとこのブログで本読んだって人はぜひ暇なときにでもいいから書いて欲しいのよ。忌憚のない意見をね。褒め一辺倒じゃなくていいから。お願い。

 これからも本出して何か気づいたこと、変わったことがあれば逐一、記事にしていきたいと思います。

 

村上春樹いじり

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